RALLY TALK VOL.2 近藤欽司先生  中国卓球界の現状を語る

RALLY TALK VOL.2 近藤欽司先生  中国卓球界の現状を語る

1942年9月25日生まれ
前白鵬女子高校監督
ナショナルチーム女子監督
インターハイ団体8回優勝
2001年第46回世界選手権大阪大会では18年ぶりに女子団体でメダルをもたらす
40年にわたる卓球指導者人生を集約した『夢に向かいて』が好評発売中


提供:日本卓球株式会社
取材/野中 直広

ナショナルチーム女子監督を務められた近藤欽司先生が、昨年末に10名の中学生、2名の指導者を連れて中国の上海で1週間の合宿を行った。そこで、古くか らの友人であり、中国卓球界では強い影響力を持っている楊光炎氏から、中国卓球界の現状を聞き、ぜひ多くの皆さんに知ってほしいという近藤先生からの強い 要望でこの企画が実現した。
中国では選手育成のシステムが充実しているが、環境的にも支援的にもさらに進んでいる。子供の頃から能力の高い有望選手を発掘し、集中的に強化し、競争さ せている。また、指導者は常に仮説を立て、今後の卓球の変化を推移し、研究し続けている。さすが中国、といわざるを得ないが、感心ばかりしてもいられな い。日本の進むべき道は?

世界チャンピオンを6~7年で作る
■はじめての試み


―昨年末に上海の方で、一週間の日程で合宿をされたそうですが…。
旅行社ユーレックスの大柿さん(白鵬OG)が企画をされて、募集をして、選手が10名、指導者が2名参加しました。遠くは北海道から2人来ました。
―この合宿の目的は?
中国で合宿をしてみたいという子供たちを全国的に募集して行いました。
実は以前にも企画したのですが、サーズの関係でできなかったのです。サーズも落ち着きましたのでもう一度企画を立て直して実施しました。今回は中学生だけ だったのですが、小学生も含めてなるべく若い時にいい経験をさせて刺激を与えて、さらに伸びてもらいたいなという願いがありました。
―こういう形では1回目ということですね。
そうです。1回目です。私たちは高校生を連れて何回もいっていますが、ユーレックスさんが企画をしてこういう形でいったのははじめてです。
たまたま、中国に私の古い友人の楊光炎さんという人がいまして、彼は世界チャンピオンを8名も発掘している人で、中国ナショナルチーム総監督をしている蔡 振華さんの恩師でもあります。彼は中国では大変な力があるし、とにかく選手の見る目がすばらしので、将来的には日本の若い有望選手も彼に見ていただいて、 いいアドバイスをしていただきたいなという考えを持っています。
今回は初めての試みでしたが、楊さんも一緒にホテルに泊まって練習も一緒に見てくれ、24時間一緒に行動してくれました。練習はもとより、いろいろなこと を選手に話してもらったり、選手の質問に答えていただいたり、また、スタッフだけでミーティングをして、中国の実情を聞いたりしました。
最後の夜には曹燕華さんに招待を受け、上海チームのスタッフも一緒に食事をしました。
 ―今回の企画を終え、内容的には満足のいくものだったのでしょうか?
そうですね。参加されたみなさんには満足していただけたと思います。なか日には気分転換をかねて、上海チームのエリートしか入れないナショナルセンターを 見学させていただきました。ちょうど、王励勤が上海に帰っていて、彼の練習も見ることができました。そこは普通ではなかなか見られないところです。また、 上海体育運動学校で練習したのですが、そこにいる選手は子供でもすでにプロなんです。
 ―子供もプロ? 
昔あった業余学校の現代版といいますか、そこには、いろいろな競技がありますが、その中でも卓球はレベルが高いそうです。ここの総監督を曹燕華さんがやっているのです。私どもの練習にも1日だけ顔をみせてくれました。
小・中・高ですが、ようするに選ばれた人しか入れないわけです。月水金は午前中授業で、午後と夜練習、火木土は1日中練習で日曜日が休みという日課で、た だし、自分でやりたければいつでも練習ができるようになっています。そこが大事だといっていました。
―そこは寮生活でしょうか?
そうです。みんな寮生活で、親元を離れて全国から集まってきています。いわゆるエリートしか入れないわけです。
―練習はそこの子供たちと一緒に行ったのですか?
はい、そうです。そこも大変立派な施設で、台は40台ありました。我々の宿泊は外のホテルにしましたが、そこにも宿泊施設はあります。
―楊先生は、今はどちらに?
楊先生は、住まいは南京です。江蘇省の総監督は定年して、これからは海南市の監督として活動するそうです。

多球練習

多球練習

■理論的な背景がある

―ところで、中国の現状はどのようになっているのでしょうか?
 中国には今、スーパーリーグがあり、それにスポンサーがついて、選手は引き抜き合いするほどです。
―やはり、中国もシステムがだいぶ変わってきているようですね。
中国の組織は、日本とは社会体制も違いますが、やはり、小さい時から素質のある選手を見つけて、どんどん上に吸い上げていくというやり方です。当然、素質 のある選手には報酬が与えられ、スタッフもいい指導者になれば、高い報酬をもらえます。あるいは、個人的に指導者を指名して練習をみてもらうこともあるよ うです。
中国には過去に86人の世界チャンピオンがいるそうです。ところが、調べてみるとすべて卓球をはじめてから10年以上は経っているそうなんです。これは、 非常にロスが多いということで、今、6~7年で世界チャンピオンを作ろうという計画に入っているそうです。では、そのためには、何をどのようにしたらいい のかを考えて取り組んでいるところだと言っていました。当然、技の問題、新しい技の研究、練習方法といったものを改善していかなければいけないわけです。
―中国は発想が面白いし、チャンピオン国でありながら新しいことに常にチャレンジしているということですね。
やはり、中国は必ず理論的な背景があってやっています。フィーリング、感覚的なものも大事ですが、理論で説得させるものがないと受け入れられない。そこが 日本とは違う点です。そのかわり、指導者たちが理論的な背景を確立するためにものすごくディスカッションするわけです。あるいは、仮説を立てて研究するの です。
例えば、卓球はどういう競技かといったら、ほかの競技と比較して非常にわかりやすく理論づけています。卓球は、点がとりやりやすいが、守りが難しい。先手 をとれば点をとる確率が高いということです。そういわれれば確かにそうです。でも、サッカーは、点差がつかず点がとりにくい競技。得点は難しいが守りはや りやすいという競技性があります。また、卓球はどんなにすばらしいプレーをしても1点で、凡ミスしても同じように1点です。バスケットのように3点とれる プレーはないわけです。
また、11本マッチになってから卓球の考え方がだいぶ変わってきています。まず、練習では、より試合に近い練習が多くなっている。つまり、試合ではまず短 いサービスが多い。それに対してレシーブはストップ、あるいはフリックが多い。相手も先手を取らさないように考えているわけですから、サービスを持ってい ても全部先手をとることができない。そこには先手争いがあるわけです。先ほど話したように攻撃した方が点がとりやすいという部分です。しかし先手をとられ たら全部がダメではいけませんからディフェンスの技術もあわせて、台からは離れずに前陣でのブロック、カウンターが必要です。プロツアーを見ても中国の女 子選手はほとんどコート近くでプレーしていますね。
この先手をとるということを非常に重要視しています。
―そうしますと具体的にどのような練習をするのでしょうか?
11本マッチではあっという間に終わってしまう。そこで頭をものすごく使わなければいけない。また、戦術の変換というものが大事になってきています。つま り、ボールの威力とか、技の種類とか、体力面すべてを40ミリボールになって11本マッチになったことで、今までより一段上に上げなければ戦えないという 考え方なのでしょう。
戦術的にもあそびがないので、その分、次々に変えていかなければならない。
そして、8―8になる確率が多い。そこから3本の点の取り方に、戦術の幅、冷静な試合運び、あるいは相手が何をやってくるのかという読み。この3本の組み立てに難しさがあると考えています。
そして、試合に近い練習とは何かというと、卓球の道理、定石をよく理解し、それから相手のクセ、特徴を推理して相手の変化に対応しながら練習することです。
そういう考えで、例えば、サービスを持った時は、第1に3球目で先手をとり強打する。でも、レシーブがうまければ強打できないのでつながなければいけな い。そのつなぎが甘ければ4球目強打されるので、そうさせないつなぎ。3つ目は、サービスがちょっとでも甘ければ逆襲を食らう。それはブロックで防がなけ ればいけない。
つまり、サービスからの練習では3球目で強打することが第1優先で、強打できない時のつなぎが第2優先、そして強打された時はブロックする、この3つの選択肢をもって練習をやるのです。
日本の場合は、一方は強打、一方はブロックという選択肢のない練習が多い。そこを強調しています。日本では3球目の練習なら、レシーバーが強打することは 少ないですね。そこの、意識が全然違うわけです。試合の状況での意識を持った練習が大事です。つまり、お互いに先手をとるという意識で練習することが試合 に近い練習です。
指導者の目も大事です。後ろで見ていて選手が強打できるボールをつないだら、それを否定しなければいけないわけです。そうしないと選手が育たない。それか ら、もっといけないのはブロックしなければいけないボールを強打してしまい大きなミスをすること。たまには逆襲のプレーが必要かもしれないが、11本マッ チですから、そんなには使えない。ブロックするべきボールは、手堅くブロックしなければいけないのです。
レシーブ側も4球目に対する選択肢が必要です。レシーブでは、まず、相手の3球目を封じるレシーブをしたいが、多くはそうできはしない。すると、相手の3 球目攻撃を止めるブロックの意識が一番になるでしょう。次にレシーブがうまくいって相手がつないできたボールを4球目強打できるのであれば、強打し、でき なければつながなければいけない。サービスの時とは優先順位は変わりますが、やはり選択肢が常にあります。打てるボールを見逃したら、やはり指導者は指摘 しなければいけない。
これが、試合のための練習ということになります。

仮説を立て、研究や議論を重ねる

■孔令輝型よりも馬琳型

――11本マッチに対して中国の傾向は?
中国では11本マッチに対して、当初は孔令輝型の選手を育てようとしていたようです。それの方が勝ちやすい、つまり、ミスが少ない安定したラリー型の方が有利と思ったようです。しかし、実際にいくつもの試合を経験していくと、孔令輝型よりも一発のフォアドライブがある馬琳型の方が勝ちやすいという現象が出てきました。どういう戦型が有利かというのは、いまだに仮説状態であって、実験中。確実にこういう方がいいという結論はでていないという話をしていました。
しかし、私の推測では、馬琳型の選手を育てる方向にあります。なぜなら、若い選手の練習を見ていたら、ガンガン、フルスイングで練習しているのです。小さな子供が。すごいですよ。
――男子と女子では多少違う面があるような気がしますが…。
バック技術は女子の方がうまいですね。男子はすぐに回り込みます。フォアで積極的に攻め込む形が多くなっていますが、女子は両ハンドでプレーする機会が多い感じです。
そして、先ほどもいいましたが頭の方の訓練です。21本の時と違いあそびがないわけですから、頭を使う意識が重要なのです。
 ――そのようなことをすぐに理解できる選手もいれば、理解できても反応が遅い選手もいると思いますが、どのように指導すれば全員をいい方向に向かわせることができるのでしょうか?
この体育運動学校は、1、2年間くらいで伸びがない、つまり成果がない子供は地元の学校に帰されてしまいます。入れ替えがあるのです。コーチが観察していて、上達しない子は帰されてしまうのです。
――それでは、選手も必死ですね。そういう状況では、競争の原理ですから、生き残るためには自分が必死にやるしかない。それも中国ならではのシステムでしょうが、日本ではあてはまりませんね。日本の場合は、どのように高めていけばいいのでしょうか?
日本の場合は、卓球をやりたいという子供を、あなたは能力がないからこなくていいよとは言えない社会ですね。つまり、そこには教育的な配慮があります。
日本では底辺を広くしなければならないし、頂点も高くしなければいけない。そのためには、能力が高い子供を発掘して、こういったところで一緒に訓練させてもらう機会を多くする。
あるいは、もっと上をいくとするなら、中国で合宿しながら日本の学校と同じ勉強ができるくらいのことが将来的には必要になってくると思います。向こうで一緒に練習しながら、学校も卒業できるという体制ができてくればいいのですが…。
――そういうことは可能なのでしょうか?
それは学校が認めるかどうかでしょうが、1年間はできないにしても、一ヶ月間くらい行っても学校も欠席にならす、進級もできるくらいのことは、将来有望で選ばれた子供には考えていかなければいけないでしょう。
――たしかに今は、だんだんそういう時代ではありますね。
そうです。男子ではすでにヨーロッパの方に何名か行っていますね。それは学校の配慮でできることですが、限られた学校でしかできないわけです。
もっと公的な機関でできるよう、また、あそこまでやるのが本当にいいのかはわかりませんが、もう少し短縮して、半分は中国で半分は日本、あるいは3分の1が中国で、日本にいる時はほかの生徒と同じように勉強もする。中国でももちろん勉強して、普通の教養は見についていくようにしてあげる。先生も一緒に行って、向こうで授業をするという方法もあります。
しかし、今の日本の社会体制では難しいかもしれませんが、みんなが協力し、意見を出し合い、一歩前進するための改革をしていかなければいけないのではないかと思っています。
――日本ではクリアしていかなければいけないハードルがたくさんありますね。
そうですね。この体育運動学校では、日本人の受け入れはしてくれます。ただ、むこうで勉強しても日本の学校の単位として認めてくれないわけです。
中国語はうまくなるかもしれませんが、それは科目にありませんから、向こうで日本の勉強ができ、単位として認めてもらえればいいわけです。


卓球練習
卓球練習

■心のコントロールは自主練習で生まれる

――早くそうなって欲しいですね。話は変わりますが、中国ではメンタル面の強化はどのように行っているのでしょうか?
先ほどからお話していますが、11本マッチになってすべての面であげていかないといけない。体の面、技の面もそうですが、心の面もそうです。
心技体といいますが、お互いに戦う中で卓球競技は特に自分の心をコントロールしなければならない競技です。ですから、心をコントロールできる自分を作って いかなければいけない。それは、心の支えをつくることです。では、心の支えはどのようにしたらできるのかというと、私の考えと楊先生の考えが同じでした。
それは、朝早く起きて、自分で練習をするとか、トレーニングをするとか、あるいは、夜、残って、昼間の練習で納得でいないところがあったら、納得するまでやる。
上海体育運動学校では24時間練習ができるようになっていて、空いている時間に誰が練習をしているのかということを観察しているのです。誰が努力している のかということを観察して、それがつまり、途中で帰る人と残る人の違いになっていきます。人から与えられたテーマだけではダメだ。それプラス、自分でいか に努力ができるか。
やはり、心の支えは自分でつくらなければダメだということです。結局は、意識の問題になってきます。それは、目標を達成したいという強い願望がなければ、 高くならない。人間は誰でも弱さがあります。楽をしたいし、朝早く起きてやるのは嫌ですよ。だから、指導者は意識改革させるアドバイスが必要になります。
――一番難しいところですが、指導者として成功するかどうかもそこにかかっているようですね。
そうです。11本マッチでは競った場面が多いです。この時に、迷ったり、不安になったり、勝ちを意識するような選手では、指導が足りません。そこから何ができるか。そのための準備をしておかなければいけないわけです。
それが、心理面でいえば、いかに心の支えをつくっているかということです。それをつくるのは、自主練習なんです。そのように意識を高めることが指導者の仕 事です。試合で負けてショックを受けている時に、どうなんだと、自主練をやっている選手であれば、きっと効果が出てくるからもう少し頑張ってみよう、と。
あるいは、やろうと思ってもなかなかできない選手もいます。そういう方が多い。10人が強くなりたいと思っていても9人は自主的に練習ができないと思いま す。本当にできる子は一人です。その子につられて、二人三人と増えていくのがチームの強さになっていきます。
また、先輩が自主練習をしていい成績を残していい思いをしたという姿を見ると、後輩も私もああいうふうになりたい。自分たちがやってまた後輩に伝えてい く。これが伝統です。やはり伝統というのは、どうしたら勝てるのかということを残していくこと。逆にダメな先輩がいると、悪い伝統を残してしまうことにな ります。
話がそれましたが、心の支えをつくるというのは、最後の競った時に勝てる機会を増やすということです。もっと天才的な選手は、競ったときにひらめきが出て くる。たとえその内容があまり練習していないことでも試合でできます。そういう部分は天才的な部分です。
――お話を聞いていると、中国は常に卓球に対する研究が進んでいるようですね。
そうです。いろいろな仮設を立て、卓球の方向性や、どうしたらいいのかということを考え、議論しているようです。
先ほどいいました、6~7年で世界チャンピオンをつくれないのか、という仮説に対し、いろいろな方法を模索しているのです。
――中には失敗もあるでしょうが、常に前向きに取り組んでいるところは日本も見習わなければいけませんね。
失敗も多いと思いますよ。でも、それが一つの方針としてマニュアルとして、中国全土の指導者に流れるわけです。
――ほかに何か感じていることはありますか?
トレーニングも結構時間をかけて、ダッシュをしたりうさぎ跳びをやったり、腹筋、背筋など、大体、日本と同じようなメニューをしていました。
――特別なトレーニングなどはないのですか?
特殊な機械を使ってやることは見られませんでした。普通に考えられることをやっています。ただ、そのための時間をとれるのが大きい。一日の練習時間は大 体、6時間だそうです。それからトレーニングを40~50分くらいやっています。
――戦術的なものは何か?
戦術的な技の幅を増やすことは当然ですが、試合でのカウント8―8から相手が何をやってくるのかという予測が大事です。自分がやりたいことがあるように、 相手もやりたいことがあるわけですから、そういうかけ引きですね。そこでミスしたかどうかではないんです。何を予測してプレーをしたのかということが問題 で、それが正しければミスしてもしょうがない。それが全然外れてしまったりするのは問題があるわけです。私の本『夢に向かいて』でもふれましたが、頭が疲 れる練習というのはまさにそういう部分です。
それから40ミリボールということで、ボールの飛ぶ距離の問題から前陣、あるいは中陣でプレーをして、当然打球点は早くなるわけですから、反応が早くなけ ればいけない。あるいは判断。これはすごく重要視しています。特に、ノータッチに対しては厳しくしています。とにかくラケットに当てること。
前中陣で肘から先、手首から先のプレーをしながら一発の強ドライブに結びつけるという筋書きなんですね。これは特にレシーブからの展開ですね。
一発で抜くドライブは必要ですが、その前に一発をやらせないプレーがなければいけないし、チャンスボールをつくる技、レシーブとかストップ、あるいはサー ビスとかありますが、強打を打つ前のボールが大事です。これは、多球練習の中で技の練習をしていました。
それから、我々が一緒にミーティングをした中で、中国では新しい技ということで、ペンの裏面打法を進化させて、レシーブから使ったり、一発ドライブを打ったり、すべてフォア側と同じ技ができるように訓練しています。
それから韓国の朱世赫を原型にして新カット型を研究しているようす。バックはカット、フォアは強ドライブという戦型です。
また、レシーブ技術、台上処理もフリックを含めて横回転を入れたり、いろいろ意外性の技を考えてやっています。

意識が変われば生活が変わり、結果も変わる

■強くなるためには意識の問題が大事

――ところで、楊先生の指導はどこが違うのでしょうか?
素質のある新人を発掘し、次は育てるという部分ですね。午後の多球練習は、一台は楊先生がやってくれて、残りはほかのコーチがやってくれました。合宿中全員が一度は楊先生にやってもらおうと計画を立てました。2日目が終わったときに、楊先生とほかのコーチとの違いを選手に聞いたところ、全然違うという答えでした。
楊先生にそのことを聞いたら多球練習にも一流と二流があると言っていました。選手は楊先生のノックのボールはどこへくるのかわからない。いわゆるフェイントをかけたりして、意外性があるのです。これが、選手にとっては判断力とか逆に来た時の対応とか試合の中で大事な要素を持っている。これを多球練習ではやらなければダメだと。選手が簡単に打てるようでは二流ということです。また、その内容も試合で役立つ内容を考えなければいけない。
観察していると、ツッツキでも切ったり切らなかったりと回転に変化をつけている。試合では相手は当然、変化をつけてくるわけですからそこが重要で、打ちやすい練習では試合のためにはならないわけです。
――その他楊先生とお話した中で、印象に残ることはありますか?
特に強調していたのは、11本マッチの試合での心理面の重要性です。試合ではまず、自信を持つことは重要。二つ目は、自分の心のコントロール、先ほども触れましたが心の支えが必要。試合はポイントをとったりとられたりですし、自分がミスをする場合もある、その時に自分と自分との対話の中で、自分をいい心理状態に持ち上げる。落ち込んだままではダメだと。弱気になったら自分でいい状態にもっていく心のコントロール。これは先ほども言ったように自主練習をしなければなかなかできない。普段の生活の中でも自分勝手なわがままではダメだと言っていました。もうひとつは度胸が必要だと、つまり思い切りが必要だと言っていました。それは無茶打ちとは違いますけど。
若い選手が強くなっていくためには、意識の問題が大事だと強調していました。その根底は何かというと、自分は何をどのようにしたら強くなれるのかということを常に考えなければいけない。自分自身で自分の問題点、長所、あるいは改善しなければいけないこと、あるいはどういう新しい技術を身につけたらいいのか。そういういわゆる自分の卓球に対して常に考えて、そして工夫して練習する。こういう意識が必要。これは日本でもよく言われることです。意識が変われば生活の仕方が変わります。そういう習慣が変われば、当然結果も変わってくる。日本の考え方と通じるところがありました。


■子どもの頃から卓球が大好き

――曹燕華さんとはどのようなお話をしたのでしょうか?

子供たちに何か話をして欲しいとお願いしました。私が世界チャンピオンになれたのは、色んなやり方があるでしょうけど、卓球が好きで好きでしょうがなかった。そしていつかは必ず世界一になるという高い目標を立ててやっていました。だから、みんなが休んでいる時でも私は楽しくてしょうがないからたくさん練習をしました。
また、練習中で大事なことは、同じようなミスをしてはいけない。3本連続して同じようなミスをしていては失格だと。インパクトの角度とか、回転の判断とかを正しくやっていないからミスをするわけで、調整をしなさい。感覚の調整をしなければいけない。そうやって同じミスを防ぐようにと言っていました。
――色々貴重なお話が出ましたが、付け加えることは?
強調したいのは、40ミリボール対策と11本マッチの考え方です。それをどのようにして練習の中に取り入れていくのかが本当に大切なんです。11本マッチになって、何かを変えなければいけないとはみなさん思ってはいると思うのですが。
――最後に何かありますか?
今回、ユーレックスさんの企画で実現しましたが、中国に若い選手を連れて行き、すばらしい体験をさせることが大事だと思っています。今後はユーレックスさんで企画をしてくれるのかどうかはわかりませんが、中国側には受け入れ体制があります。世界チャンピオンを8人も発掘された楊先生とタッグを組んで、日本の若い選手の強化に尽力したいと思っています。彼も協力してくれると言っています。
――日本も中国から学んで、研究し、よりよい方向に進化して欲しいと願っています

本日は、貴重な話をありがとうございました。



元世界チャンピオンの曹燕華さんと
元世界チャンピオンの曹燕華さんと





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